付録 G 出典・参照管理テンプレート
出典管理は、脚注を整える作業ではありません。判断に使った根拠を後から確認できる状態にするための実務です。
関連する章は、第7章 意思決定に必要な情報を見極める、第8章 デスクリサーチを設計する、第9章 数字を意思決定に変える、第27章 プレイブックを更新する、付録 E AI 出力レビューシートです。
用語の使い分け
- 出典: 本文の具体的な主張、数字、引用を支える根拠。
- 参照: 考え方や整理に影響した資料。
- 参考: 読者が追加で読むと理解が深まる資料。
すべてを同じ扱いにしません。本文の重要主張を支えるものは出典として管理します。背景理解に使っただけのものは、参照や参考として扱います。
小さく始める場合は、重要な数字、制度、引用、第三者の主張だけを出典台帳に入れます。最初から全資料を完璧に管理しようとせず、判断を誤らせる箇所を優先します。
出典管理するもの・しないもの
| 対象 | 管理 |
|---|---|
| 数値、制度、価格、仕様、役職、市場規模 | 必ず管理する |
| 引用、図表、第三者の主張 | 必ず管理する |
| クライアント提供資料、社内データ、インタビュー | 内部 ID で管理する |
| 自分の経験にもとづく一般的な注意 | 必要に応じて管理する |
| 表現の参考、文章の言い換え | 通常は管理しない |
出典管理の目的は、すべての読書履歴を残すことではありません。後から確認が必要になる根拠を残すことです。
基本記録
出典 ID:
タイトル:
発行者・作成者:
ページタイトル:
公開日・更新日:
確認日:
URL・保存場所:
内部 ID(公開できない場合):
使った箇所:
支えている主張:
一次情報・二次情報:
古い出典を使う理由:
確認者:
更新担当:
出典は、読者のためだけではなく、未来の自分のために残します。どの主張を支えるために使ったかが分からない出典は、後で再利用できません。
出典台帳
| ID | 種類 | タイトル | 発行者 | 日付 | 確認日 | URL・保存場所 | 支える主張 | 反対証拠 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| S1 | 一次・二次・社内・インタビュー | 採用・保留・破棄 |
種類は、一次情報、二次情報、社内データ、インタビュー、観察、実験、AI 出力を分けます。AI 出力は出典ではなく、出典を探す補助や整理結果として扱います。
クライアント提供資料や社内資料は、公開できるタイトルを書けない場合があります。その場合は、内部 ID、保存場所、閲覧権限、確認者を残し、公開本文では「社内資料」などの扱いを関係者と確認します。
出典の種類別確認
| 種類 | 確認すること |
|---|---|
| 政府・公的機関 | 管轄、発表日、改定日、統計の定義 |
| 企業公式 | 発表日、対象地域、現在も有効か |
| 学術論文 | 研究目的、本文での使い方、調査方法、サンプル、限界、査読の有無 |
| 業界団体・調査会社 | 調査方法、対象、スポンサー、推計方法 |
| 報道 | 一次情報へのリンク、取材時点、続報 |
| 社内データ | 定義、生成過程、欠測、権限 |
| インタビュー | 同意範囲、対象者条件、匿名化 |
「信頼できる発行者」は一律に決まりません。制度なら公的機関、製品仕様なら企業公式、研究知見なら論文や専門機関の資料が優先されます。
主張と出典の対応
| 主張 ID | 本文の主張 | 出典 ID | 必要な確認 | 確認者 | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| C1 | S1 | 定義・単位・期間・対象 | 確認済み・要確認・削除 |
重要なのは、出典リストを増やすことではありません。本文の重要主張と出典が対応していることです。出典があっても、その主張を支えていなければ使いません。
短い提案書やスライドでは、本文中に出典 ID を出すと読みにくい場合があります。その場合でも、内部台帳では主張 ID と出典 ID を対応させ、必要に応じて脚注、章末、別紙で示します。
確認する項目
出典は実在するか:
発行者は信頼できるか:
一次情報に戻れるか:
公開日・更新日は判断に使える新しさか:
定義・単位・対象・期間は本文と合っているか:
引用や要約で意味を変えていないか:
二次資料の転載を重ねていないか:
反対証拠や別の数字がないか:
利用条件・著作権に問題がないか:
古い出典が常に悪いわけではありません。制度、価格、役職、製品仕様、市場規模、統計のように変わりやすい情報は、確認日と更新日を重視します。概念や歴史のように変わりにくい情報は、古さよりも発行者と文脈を重視します。
数字を使うとき
数字:
単位:
対象:
地域:
期間:
集計方法:
母集団:
除外条件:
更新頻度:
本文での使い方:
数字は、値だけでなく定義を残します。同じ「市場規模」でも、売上、出荷額、利用者数、契約数、対象地域、推計方法が違えば意味が変わります。
複数の出典で数字が違う場合は、どれを採用したかだけでなく、なぜ採用したかを残します。定義、期間、対象、推計方法が違うなら、数字を無理に一つへまとめません。
反対証拠を見つけた場合は、本文を弱める、条件を追加する、出典を差し替える、または主張を削除します。反対証拠を見つけたのに本文を変えない場合は、その理由を残します。
インタビュー・社内情報を使うとき
情報種別:
取得日:
取得者:
対象者・部署(匿名化):
同意範囲:
共有範囲:
匿名化:
支える主張:
使ってはいけない範囲:
インタビューや社内情報は、公開資料より扱いに注意が必要です。出典として使う場合も、個人、会社、契約、未公開情報が特定されないようにします。
AI を使った出典確認
| 工程 | AI の使い方 | 人が確認すること |
|---|---|---|
| 探索 | キーワード、候補資料、関連機関を出す | 候補が実在するか |
| 抽出 | 数値、定義、主張を抜き出す | 原文と表の照合 |
| 比較 | 複数出典の違いを整理する | 定義・単位・期間 |
| 更新確認 | 古い情報の確認候補を出す | 公式・一次情報 |
AI が示した出典は、必ず自分で開いて確認します。AI が引用した文章が原文に存在するか、原文の意味を変えていないかを確認します。
Markdown での書き方
本文中で必要な箇所に、短く出典を置きます。
市場規模は、調査会社の推計ではなく、政府統計の定義に合わせて確認する。[出典: S1]
巻末や章末には、必要に応じて出典台帳の要約を置きます。
- S1: タイトル、発行者、公開日、確認日、URL
- S2: 社内資料、内部 ID、確認日、確認者
公開できない内部資料は、そのまま公開リストに載せません。公開範囲に合わせて、内部 ID や概要だけを残します。
引用・要約のルール
引用する理由:
引用範囲:
要約で足りない理由:
原文の意味:
本文での使い方:
著作権・利用条件:
長い引用は避け、必要な場合だけ短く使います。多くの場合、出典を示したうえで、自分の文脈に合わせて要約します。ただし、要約で意味を変えてはいけません。
図表を再利用する場合は、文章の引用よりも権利や利用条件の確認が重要になることがあります。迷う場合は、権利者や専門家に確認します。
更新が必要な情報
| 情報 | 更新確認の目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 法令・制度 | 利用前に確認 | 管轄と施行日 |
| 価格・プラン | 利用前に確認 | 税、地域、条件 |
| 製品仕様 | 利用前に確認 | バージョン |
| 役職・組織 | 利用前に確認 | 発表日 |
| 市場規模 | 新しい資料が出たら確認 | 定義と推計方法 |
| 統計 | 最新公表時に確認 | 改定値 |
| 歴史・概念 | 必要に応じて確認 | 解釈の違い |
公開後に更新する本では、出典も更新対象です。本文だけを直すと、出典と主張がずれます。
更新しなくてよい情報もあります。本文の背景理解に使った古典的概念や、過去時点の事実として扱う情報は、むやみに新しい資料へ置き換えません。その場合も、過去時点の情報として使っていることを明記します。過去時点の事実と、現在も成り立つ主張は分けて書きます。
保存場所
出典台帳:
PDF・スクリーンショット:
社内資料:
インタビュー記録:
AI 出力レビュー:
閲覧権限:
バックアップ:
URL は消えることがあります。重要な出典は、利用条件に反しない範囲で PDF、スクリーンショット、取得日、ページタイトルを残します。保存場所と閲覧権限も出典台帳に書きます。
公開前チェック
重要主張に出典があるか:
出典が主張を実際に支えているか:
公開できない内部資料が混ざっていないか:
数字の定義、単位、期間、対象が本文と合っているか:
古くなりやすい情報の確認日があるか:
反対証拠を確認したか:
引用が長すぎないか:
図表の利用条件を確認したか:
出典台帳の更新担当が決まっているか:
次回確認日があるか:
破棄する出典
- 出典が実在しない
- 発行者や作成者が確認できない
- 主張を支えていない
- 定義、単位、期間、対象が合わない
- 二次資料の転載で一次情報に戻れない
- 利用条件に合わない
- 重要な反対証拠を無視している
出典を破棄することは、作業の失敗ではありません。誤った根拠を本文に残さないための判断です。
AI に出典台帳をレビューさせる
以下は出典台帳です。本文の代筆ではなく、出典管理の欠落を点検してください。
1. 重要主張と出典 ID が対応しているか
2. 一次情報に戻るべき箇所がないか
3. 定義、単位、期間、対象が曖昧な数字がないか
4. 古くなりやすい情報に確認日があるか
5. インタビューや社内情報の共有範囲が明確か
6. AI 出力を出典として扱っていないか
7. 引用が長すぎないか、要約で意味を変えていないか
8. 破棄すべき出典がないか
9. 更新が必要な本文箇所がないか
10. 確認者が未設定の重要主張がないか
AI は出典台帳の抜け漏れ確認には使えますが、出典の実在確認を任せきりにしません。最終的には、人が原資料を確認します。
更新記録
更新日:
更新者:
更新した主張:
追加した出典:
削除した出典:
変更理由:
確認者:
次回確認日:
出典管理は、公開時だけで終わりません。本書や関連するプレイブックを更新するたびに、本文、出典、確認日、更新理由を一緒に残します。