付録 C 調査計画テンプレート
調査計画は、集める資料の一覧ではありません。どの意思決定の、どの不確実性を、いつまでに、どの証拠で減らすかを合意するものです。
関連する章は、第7章 意思決定に必要な情報を見極める、第8章 デスクリサーチを設計する、第10章 インタビューで未知を見つける、付録 B 意思決定と必要データの対応表です。用語の意味を確認したい場合は、付録 A コンサルティング用語集も参照してください。
小さな判断では、まず決定、未知、確認する証拠、停止条件だけを書いて始めます。外部費用が発生する、顧客・従業員に接触する、個人情報や機密情報を扱う、後戻りしにくい投資判断になる、外部公開する、損害や権利侵害の可能性がある場合は、確認する項目を広げてください。
最初から詳細な項目をすべて埋める必要はありません。今回の判断で何が足りないと危ないかを考え、重い判断、外部接触、機密情報、専門確認が必要になった箇所を厚くします。
15 分を目安に作る初版
計画名・版・更新日時:
1. 決めること
意思決定者:
判断期限:
比較する選択肢(現状維持を含む):
最低条件:
2. 最大の未知
現時点の仮説:
結論を変え得る反証:
3. 最初に確認する証拠
既存資料・データ:
追加で行う調査:
今回は調べないこと:
情報源と確認者:
4. 上限と停止
時間・費用上限:
調査を止める条件:
前提が変わったときの再確認者:
得られない場合に小さくする判断:
5. 成果物
判断時に示すもの:
次回確認日時:
一つの計画に複数の意思決定を詰め込みません。判断期限や意思決定者が異なる場合は分けます。
詳細版
1. 意思決定の設計
背景:
決めること:
意思決定者:
専門確認者:
判断期限:
判断を遅らせる費用:
選択肢:
最低条件:
評価基準:
対象外:
決定後の最初の行動:
相談内容をそのまま調査テーマにしません。「市場を調べる」ではなく、「2027 年度に A 市場へ段階参入するか」のように、選択へつながる問いにします。
専門確認者は、論点によって変わります。契約や個人情報は法務・情報管理、決算や投資は財務、顧客接触や安全は現場責任者や専門家に確認します。
2. 前提・依存関係・変更管理
計画承認者:
再承認が必要な変更:
資料・データへのアクセス:
面談・観察・実験の調整:
外部協力者・専門家:
意思決定者が不在の場合の扱い:
対象外・調べないこと:
変更履歴の残し方:
調査の遅れは、分析力ではなくアクセス、承認、日程調整で起きることがあります。開始前に依存関係を見えるようにし、意思決定者、選択肢、期限、最低条件、情報利用の前提が変わった場合は再承認します。
3. 調査の型
今回の主目的:
探索すること:
検証すること:
判断に使う基準:
探索で止める範囲:
探索は、選択肢、論点、仮説、反例を見つけるために行います。検証は、すでに置いた判断基準を満たすかを確かめるために行います。探索の結果を、そのまま確定的な比率や因果の証拠として扱いません。
ここでの「判断に使う基準」は、調査結果をどの程度の強さで扱うかの基準です。意思決定そのものの評価基準は「意思決定の設計」に置きます。
4. 論点と仮説
| ID | 論点 | 種類 | 現時点の仮説 | 結論への影響 | 反証 | 確信度 | 更新履歴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Q1 | 記述・因果・施策 | 低・中・高 |
仮説は、記述、因果、施策を区別します。確信度は根拠の質を言葉で説明し、見かけだけ精密な確率を置きません。
5. 証拠計画
| ID | 優先度 | 必要な証拠 | 定義・単位・期間 | 情報源 | 取得方法 | 所有者・確認者 | 期限 | 時間上限 | 品質・限界 | 結論が変わる境界 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| E1 | 高・中・低 |
情報源は、一次情報と二次情報を分けます。二次資料で探索した重要な主張は、可能な範囲で一次資料へ戻ります。社内データも、定義、生成過程、欠測、変更履歴を確認します。
必須項目は、必要な証拠、定義・単位・期間、情報源、取得方法、確認者、結論が変わる境界です。所有者は取得を進める人、確認者は事実・計算・出典の妥当性を見る人です。全証拠を同じ重さで扱わず、結論を変え得るものから確認します。
6. 調査方法
| 方法 | 適する問い | 主な限界 | 今回の使い方 |
|---|---|---|---|
| デスクリサーチ | 制度、市場、企業、既存研究 | 定義差、古さ、転載 | |
| データ分析 | 規模、分布、変化、関連 | 欠測、選択、測定 | |
| インタビュー | 状況、行動、理由、未知 | 記憶、迎合、標本 | |
| 観察 | 実際の行動、業務、例外 | 観察影響、範囲 | |
| 実験 | 介入による変化 | 倫理、外的妥当性、費用 |
方法を先に選ばず、必要な証拠へ最も直接近づける方法を選びます。複数方法が同じ偏りを共有していないかも確認します。
7. 対象と標本
母集団:
対象に含む条件:
除外条件と理由:
募集・抽出方法:
予定数と根拠:
不足した場合の扱い:
欠けやすい人・記録:
結果を一般化できる範囲:
予定数は「一般的に十分な数」ではなく、意思決定、期待する差、ばらつき、到達可能性から決めます。質的な探索では、多様性、主要パターン、追加しても新しい論点が出にくくなる状態を見ます。量的な確認では、期待する差、ばらつき、必要精度、母集団への一般化可能性を確認します。少数でも探索には使えますが、確定的な比率へ一般化しません。
8. 分析計画
集計・分類する項目:
比較する軸:
反例として扱う条件:
判断基準へのつなげ方:
使わない分析:
再現手順:
分析計画は、調査後に都合のよい切り口を探すことを防ぐために置きます。ただし探索では、想定外の論点が出ることもあります。その場合は、元の計画と新しく見つけた論点を分けて記録します。
AI に自由記述の分類や要約をさせる場合は、分類基準、例外、判断に使うラベルを人が確認します。AI の分類結果をそのまま集計せず、少なくとも重要な分類と境界事例を原文に戻って確認します。
9. 情報管理と倫理
情報区分:
収集する個人・機密情報と必要性:
説明・同意:
利用目的:
保存場所と閲覧権限:
保管期限と削除責任者:
匿名化・仮名化:
外部サービス・AI への入力可否:
事故・相談・停止経路:
公開範囲:
取得できる情報をすべて集めません。目的に必要な最小限にし、契約、法令、組織規程、参加者への影響を担当者・専門家と確認します。
10. AI の利用計画
| 工程 | AI の役割 | 入力できる情報 | 人の確認 | 禁止事項 |
|---|---|---|---|---|
| 探索 | 検索語、資料候補 | 公開情報 | 原資料の存在と日付 | 存在しない出典を採用しない |
| 抽出 | 定義、数値、主張 | 許可済み資料 | 原文と表の照合 | 引用範囲を改変しない |
| 比較 | 共通点、差、反例 | 情報区分内 | 定義・単位・母集団 | 類似を因果としない |
| 編集 | 要約、構造、表記 | 公開可能な草稿 | 論証と機密 | 合意・承認を捏造しない |
利用する環境、契約、保存、学習利用、閲覧権限を確認します。AI の出力は証拠ではなく、原資料へ戻るための補助です。
11. 品質確認
事実と推論を分けたか:
重要主張を原資料で確認したか:
定義、単位、期間を揃えたか:
反対証拠と欠測を探したか:
再現できる計算・手順を残したか:
別の担当者が主要証拠を確認したか:
結論の適用範囲と未知を示したか:
確認者は文章を整えるだけでなく、判断を変える主張、計算、出典、最低条件を優先して確認します。
12. 進行と停止条件
| 確認点 | 予定日 | 判断 | 責任者 |
|---|---|---|---|
| 計画承認 | 開始・修正・見送り | ||
| 中間確認 | 継続・重点変更・停止 | ||
| 判断準備 | 追加調査・決定へ進む |
次の場合は調査を止めるか、計画を再承認します。
- 最低条件違反や重大な安全・権利問題が判明した
- 追加情報を得ても選択が変わらない
- 取得費用・時間が情報価値を上回る
- 判断期限に間に合わない
- 前提、対象、選択肢が大きく変わった
- 許可されない情報利用が必要になった
13. 成果物と引渡し
意思決定者向け要約:
証拠表・出典:
分析ファイル・再現手順:
未確認事項・反対証拠:
推奨と選択肢:
決定記録(決定・保留・追加調査):
今回の学び:
保管場所・権限:
次回見直し日:
成果物の完成ではなく、意思決定者が選択肢、証拠、危険、残る未知を理解し、決定を記録できることを完了条件にします。
AI に計画をレビューさせる
以下は調査計画です。内容を代行して埋めず、計画の欠落を点検してください。
1. 意思決定者、期限、選択肢、最低条件が具体的か
2. 各論点の答えが結論を変えるか
3. 仮説が反証可能か
4. 証拠の定義、単位、期間、情報源、確認者があるか
5. 複数の証拠が同じ偏りを共有していないか
6. 反対証拠、欠測、除外対象を探しているか
7. 調査の時間・費用上限と停止条件があるか
8. 個人情報、機密、権利、安全の確認があるか
9. AI が自動決定してはいけない箇所を示しているか
10. 今回の判断では省ける項目と、重大判断では不足する項目を分ける
計画は調査開始前に一度作って固定するものではありません。新しい証拠で仮説や重点を変えた場合は、誰が何を変え、期限・費用・成果物へどう影響するかを版として残します。